近年のカメラでは、自動で被写体を認識してフォーカスを合わしてくれる便利な機能、AF(オートフォーカス)がありますよね。
カメラに像面位相差AFやコントラストAFなどの被写体検出装置がありますが、レンズには、実際にフォーカスレンズを動かすためのAFモーターが搭載されています。
今回はAFモーターの種類や実際のフォーカス速度の違いについて解説していきます。
そして、カメラメーカー各社がどのモーターを採用しているかについて紹介します。
AFモーターの種類4つ
現在レンズに採用されているAFモーターには、主に4つのモーターがあります。
それぞれの傾向は以下になります。
DCモーター | ステッピングモーター | 超音波モーター | リニアモーター | |
---|---|---|---|---|
駆動音 | 大きい | 小さい | 並 | 小さい |
駆動力 | 強い | 弱い | 強い | 弱い |
AF速度 | 遅い | 並 | 速い | 速い |
価格 | 安い | 並 | 高い | 高い |
ただ、リニアモーターは複数機搭載することによって駆動力を高くすることが可能です。
もう少し深堀りしていきます。
DCモーター
レンズ内AFモーターが登場し始めた頃に最も標準的であったAFモーター方式。
今となっては特にメリットはないですが、現在でも比較的安いレンズで採用されています。
商品説明で採用されているモーターの記載がなければ、DCモーターのことが多いです。
ステッピングモーター
パルス電力で駆動するモーター。
カメラ側のAFシステムは主に(像面)位相差AFかコントラストAFが採用されていますが、ステッピングモーターは細かいフォーカスの行き来が発生するコントラストAFとの相性がいいです。
超音波モーター
超音波振動を回転に変え、駆動力を発生させるモーターです。CANONが1987年にEF300mm F2.8L USMに初めて採用してしばらく経ってから、各社でも用いられるようになりました。
メーカーによって呼び方が変わっています。
・CANON
USM
・SONY
SSM
・NIKON
SWM
・OM(オリンパス)
SWD
・SIGMA
HSM
・Tamron
USD , PZD
基本的にはリングUSMという超音波モーターが使われますが、CANONはナノUSM、SONYはDDSSMという独自の超音波モーターを開発し、採用しています。
リニアモーター
電磁石で駆動力を発生するモーター。
実際のAFモーターによる駆動音やフォーカス速度の違い
DCモーターとステッピングモーターの比較(静止画のAF-S)
ボディはGX7MK2です。
静止画のAF-Sだとステッピングモーターでも速い。
DCモーターは音が大きく、AFもかなり遅いことがわかります。
DCモーター、超音波モーター、ステッピングモーターの比較(動画撮影)
ボディはa7iii
タムロン35mm F2.8のDCモーターは、音は煩いですが、動画撮影だとフォーカスが速いことがわかります。(静止画AF-Sだとそれなりに遅いです。)
シグマ35mm F1.2の超音波モーターはそこまで速くありませんし、若干駆動音がします。
シグマ24-70mmのステッピングモーターはそれなりにAFがスムーズで静粛です。
リニアモーターとステッピングモーターの比較(動画撮影)
ボディはa7iiiです。
・リニアモーターは爆速なことがわかります。(SONYのリニアモーターのレンズも同じ傾向です。)
・特に85mm F1.4のステッピングモーターは、先程の24-70mmのときと違い、かなり遅いです。
覚えていてほしいことは、同じ形式のモーターを搭載していてもレンズやメーカーによって、駆動音や速度が変わるということです。
自分がこれまでレンズを使用した経験による体感ですが、開放F値が低いレンズの方がAFが遅い傾向にありました。F値が低いとフォーカスが合う位置が狭くなりレンズも大きくなりがちなので、フォーカス速度が不利なんだと思います。
サードパーティ製のレンズの場合のAFの挙動に注意
AFモーターの種類に関わらずこのような傾向になっていて、タムロンのリニアモーターのレンズを使ってもAF-Sはもたつきやすいです。
もちろんSONYの純正レンズを使うと、AF-Sでも高速です↓
a1やa7IVなど新世代のカメラであれば、サードパーティレンズを使用したときのAF-Sは少し改善しているように見えます↓
SONYだけじゃなく、他のメーカーのカメラでも、サードパーティレンズを使用するとAFが不安定になる傾向がありますので注意が必要です。
レンズのモーターよりボディのほうが重要
レンズがDCモーターであればさすがに足をひっぱりますが、ステッピングモーター以上であればボディ側の性能のほうが重要だと感じています。
以下の2つでAF速度を比べました
・R6 + 24-240mm USM(超音波モーター)
・a7iii + 28-200mm (ステッピングモーター)
どちらも設定の「AF速度」は「速い」にしています
これはどちらかというとボディ側の性能が表れていると思われます。
動画のピントがシビアなマクロ域では、まだSONYのAFが優勢なのかな、と思いました。
静止画ではどちらも速い。
続いて以下の2つでAF速度を比べました
・S5 + 20-60mm(ステッピングモーター)
・a7iii + 28-200mm (ステッピングモーター)
ボディ側のAF性能のほうが重要だと、なんとなくお分かり頂けたと思います。
特に動画の近距離では差がでやすいですね。
今までの僕の経験では、同じボディで比較すると以下のようになる印象です。
超音波モーター = リニアモーター > ステッピングモーター >> DCモーター
各社ミラーレス用レンズに採用しているモーター
リニア | ステッピング | 超音波 | DC | |
---|---|---|---|---|
SONY | ○(XDLM,LM) | ○(STM) | ○(RDSSM,DDSSM) | ○ |
CANON | x | ○(STM) | ○(USM) | x |
NIKON | ○(SSVCM) | ○ | x | x |
Fujifilm | ○ | ○ | x | ○ |
Panasonic | ○ | ○ | x | ○? |
OM | ○ | ○ | x | ○? |
タムロン | ○(VXD) | ○(RXD) | x | ○(OSD) |
シグマ | x | ○ | ○ | x |
安価なレンズにはDCモーターやステッピングモーターが搭載されている事が多いです。
ただ、ニコンのレンズは、高価なレンズにもステッピングモーターが搭載されています。
SONY
SONY公式のレンズ一覧ページを見ると使用モーターの記載があります。
LM , XD LM , DDSSM , RDSSM , STMが使われていますね。
例えばFE50mm F1.8など、記載のないレンズはDCモーターです。
比較的安いレンズにはDCモーターやステッピングモーターが採用されていることがわかります。
CANON
CANON公式のレンズ一覧ページでレンズの名前の語尾を見ると、使用モーターの記載があります。
USM , STMの二種類だけですね。
SONYと同じく、STM(ステッピングモーター)は安価なレンズに採用されています。
USMは超音波モーターのことですが、ナノUSMとリングUSMに分かれ、レンズの個別ページを見ると、どちらが採用されているかわかります。
ミラーレス用(RFマウント)レンズの多くは、超音波モーター(ナノUSM)を採用しています。
ただ、600mm F4などの大きいレンズはリングUSMです。
AF速度は爆速、静粛なので、超音波モーターに関する技術力はトップなのでは?と思います。摩擦による経年劣化も極限まで抑えられてるかと。
NIKON
NIKON公式ページを見るとわかります。
かつてニコンは、一眼レフ用(Fマウント)の多くで超音波モーターを採用していましたが、経年劣化と共にAFの鳴きが発生する事例がありました。だからなのか、Zマウントでは400mm F2.8を除き、全てのレンズがSTM(ステッピングモーター)駆動です。
Z 400mmF2.8ではついにSSVCMというリニアモーターが採用されました。ただ、このレンズ160万円ほどするんですよね。
この技術が今後ほかの安価なレンズにも搭載されるかは注目です。
FUJIFILM
Fujifilm公式ページでレンズごとに、かなり見やすくモーターが記載してあります。
・DC (DCモーター)
・STM(ステッピングモーター)
・LM(リニアモーター)
の3種類ですね。
なにかのモーターに偏ることなく、満遍なく使われています。
Panasonic
フルサイズ用(LマウントSレンズ)はPanasonic公式ページでレンズ詳細ページを見ると、↑のようにAFモーターに関しての記載があります。
マイクロフォーサーズマウント用のレンズは、公式ページに一部のレンズだけモーターの記載があります。
その他のレンズは記載がありません。
OM(オリンパス)
OM公式ページに記載されているレンズは↓で以上です。
リニアモーター
12-40mm F2.8 , 40-150mm F2.8
ステッピングモーター
17mm F1.2 , 150mm-400mm F4.5 , 300mm F4
フォーサーズマウントの時はSWD(超音波モーター)を採用しておりましたが、マイクロフォーサーズでは殆どがステッピングモーターだと思われます。
注目すべきは超望遠レンズでもステッピングモーターを使用していること。なるべく軽く仕上げる為だったみたいですが。
マイクロフォーサーズのレンズは軽いので、ステッピングモーターの駆動力でも問題ないのでしょう。
タムロン
タムロン公式ページを見ると、↑のように、いとも簡単にわかります。
レンズの語尾を見るとわかります。
RXD (ステッピングモーター)
VXD (リニアモーター)
OSD (DCモーター) です。
ミラーレス用になってUSD(超音波モーター)は使われなくなりました。
シグマ
シグマ公式ページから↑のようにレンズ詳細ページを見ると、全てのレンズで使用モーターの記載があります。
一眼レフ用のレンズでは、レンズ名の語尾にHSM(超音波モーター)とついていてわかりやすかったですが、ミラーレス用ではレンズ名だけでは把握できなくなりました。
シグマのミラーレス用のレンズは、ほぼ全てステッピングモーターと思っていただいてOKです。
35mm F1.2 DG DNと105mm F2.8 DG DNのみ超音波モーターになります。
※新発売の60-600mm DG DN と50mm F1.4 DG DNにはリニアモーター(HLA)が搭載されました。
今後のArtやSportsレンズには、リニアモーターが搭載されそうですね。
AFモーターの違いによって、静粛性やAF速度も違いとなって表れてきます。
それぞれの特徴を把握してレンズを選択していきましょう。
ここまでお読み頂きありがとうございました。
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※すべてのレンズでこのようになるわけではありませんが、傾向がわかるかと思います
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